2016年の部活動に関連する主な社説のタイトルと本文です。
2016年 部活動関連社説 大橋基博編
内容
160108 信濃毎日:教師の体罰 主権者教育にも反する
160108 西日本新聞:「チーム学校」 拡充急ぎ教員の負担減
160109 河北新報:「チーム学校」/社会総がかりの教育実現を
160111 北海道新聞:教員定数削減 現場の実情から議論を
160114 東奥日報:学校・教委一丸で解消を/県内教職員の多忙化
160531 北海道新聞:部活動顧問 負担軽減に知恵を絞れ
160610 紀伊民報:(水鉄砲)「クラブ活動と教員」
160801 西日本新聞:部活動の適正化 教員の負担軽減は急務だ
161007 琉球新報:教員超勤放置 労基法順守し健康を守れ
161108 紀伊民報:部活動の休養日 掛け声だけでなく定着を
161218 北國新聞:全国体力テスト 「文武両道」を育む環境さらに
161221 読売:日大東北相撲部 暴力は指導でなく犯罪行為だ
161221 京都新聞:頑張り過ぎ部活 休養の大切さ気付いて
161222 河北新報:福島・部活動で暴力/学校側の感度が鈍すぎる
161226 千葉日報:ガイドライン、早急に策定を 部活休養「設定なし」16%
161227 紀伊民報:子どもの体力と学力 学校プラス家庭と地域で
160108 信濃毎日:教師の体罰 主権者教育にも反する
前年度より大幅に減ったからといって歓迎できるものではない。
昨年度に体罰をして処分を受けた国公私立の学校の教員数だ。昨年末、文部科学省が公表した。
2012年12月下旬。大阪市立桜宮高校のバスケットボール部主将の男子生徒が、顧問だった教諭から十数回平手打ちされる暴行を受けた後、自殺する痛ましい事件があった。
これを受けて文科省が行った緊急調査で体罰の掘り起こしが進み、13年度に処分を受けた教員は4千人余と過去最多になった。
昨年度はその3割弱の1100人余(長野県は公立で27人)だった。とはいえ、生徒の自殺発覚前の11年度まで公立で300?400人台だったことを考えると、まだかなり多い。
悲惨な事件の教訓が生かされていない。憂うべき事態だ。
しかも、体罰は「主と従」の関係の中で起きやすい。発覚するのは氷山の一角で、数字の裏にその何倍もの体罰が隠れているとみるべきだろう。
言うまでもなく体罰は法令違反だ。学校教育法で禁止されているだけではない。殴る蹴るなどは刑法の暴行罪、けがをさせれば傷害罪に当たる。その常識が学校ではいまだに通用しない現実を映す。
生徒の自殺から3年。両親の憤りは収まらない。
遺体の唇の周辺は殴られた痕で変色していた。元顧問は傷害と暴行の容疑で書類送検され、執行猶予付きの有罪判決が確定。日常的に体罰をしていたとして懲戒免職にもなった。その元顧問を昨年、市立中学3校のバスケ部顧問が招いて生徒を指導させていた。
「かっとなった」「自分の感情をコントロールできなかった」…。本年度、長野県教委が暴力による体罰で懲戒処分にした例を見ると、教員としての資質を疑う理由が目立つ。それでも懲戒の中で最も軽い戒告で済んでいる。処分する側の意識も甘い。
体罰の罪は、子どもとの対話を拒否していることにもある。
この夏の参院選から選挙権が18歳以上に拡大する。文部科学省は「主権者教育」の充実を求めている。それは単に投票の仕方や選挙制度を学ぶことではない。対話や議論を通じて合意を形成する民主主義のルールを日常生活で身に付けることだ。
言うことを聞かないから暴力で従わせる体罰とは対極にある。体罰の根絶なしに、主権者を育てる教育は進まない。
http://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20160108/KT160104ETI090002000.php
160108 西日本新聞:「チーム学校」 拡充急ぎ教員の負担減を
忙しい公立小中学校の教員の仕事を多様な専門スタッフが支える「チーム学校」の仕組みをもっと充実すべきだと、中央教育審議会が馳浩文部科学相に答申した。
深刻化するいじめや貧困の問題など子どもを取り巻く環境は複雑化している。心理や福祉の専門家が学校運営に参加する意義は大きい。着実な配置を期待したい。
答申は、臨床心理士などのスクールカウンセラー(SC)、福祉と学校をつなぐスクールソーシャルワーカー(SSW)を学校職員と位置付け、配置の拡充を求めている。将来的には全校への配置を目指すという。
部活動指導員(仮称)の新設も盛り込まれた。中学の部活では経験したことがない運動競技を指導する教員が46%に及ぶ。週の指導時間は平均7時間を超え、休日の大会引率もある。事故時の対応など詰めるべき問題もあるが、指導員を歓迎する教員は多いだろう。
答申の方向性は妥当だが、どう実現するかだ。例えば子どもの貧困対策で国は自治体に補助金を出し、SSWを2019年度までに約1万人配置する計画という。しかし14年度はまだ約1200人にすぎない。本紙の調査によると、九州各県ではこの2年、長崎を除きほぼ横ばいで推移している。
専門職を雇用する自治体にとって、増員は財政的に厳しく、地方には人材も乏しい。国が給与の補助率アップや人材育成などの対策を講じなければ、答申は「絵に描いた餅」になりかねない。
次期学習指導要領には、能動的学習法の導入や英語指導の強化が盛り込まれた。教員が授業に専念できる環境づくりは急務である。
少子化を理由に財務省は教員の大幅削減の圧力を強めている。文科省は教員
と専門職を組み合わせた「将来の学校」像を明確に示して、要員要求に説得力を持たせるべきだ。
中教審は地域と学校の連携強化についても答申した。学校の仕事は全て教員が担うのが当然-。社会に根強いそんな固定観念も変えていく必要があるのではないか。
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/syasetu/article/217105
160109 河北新報:「チーム学校」/社会総がかりの教育実現を
文部科学省の中等教育審議会が、学校の組織力向上と、地域連携を強化した学校運営の推進を盛り込んだ改革案を、馳浩文科相に答申した。
いじめや不登校、貧困問題への対応など、学校に期待される役割は広がる一方だ。欧米に比べて教員の勤務時間が長く、子どもと向き合う時間が十分確保できていない状況を考えれば、複雑、多様化する課題の解決を教員だけに求めるのには限界がある。未来を担う子どもを社会が総がかりで育むという答申の方向性を支持したい。
改革案の柱は専門性に基づくチーム体制を構築することによる組織力強化だ。心理的なケアを担うスクールカウンセラーや福祉の専門家であるスクールソーシャルワーカー、部活動を指導する「部活動指導員」などを学校職員として法令上明確化する。
子どもたちが時代の変化に対応し主体性を持って問題を発見、解決する能力を身に付けるため、教員には能動的学習(アクティブラーニング)を重視する授業改革が求められている。専門性を生かした学習指導に専念するためにも、教員の負担軽減につながる環境づくりは歓迎されよう。
多様な価値観や経験を持った大人と接する中で、子どもが「生きる力」につながる経験を積むことも期待できる。
答申はまた、公立小中高校の運営に地域住民らが直接参画し、登下校の見守りや放課後の教育活動、安全・安心な居場所づくりなどを支援する「コミュニティースクール」の導入を努力義務化するよう求めた。学校には地域連携を担当する教職員を配置する。
2004年に導入された制度だが、学校運営や教職員の任用に対し保護者や地域住民が意見を述べられるため、警戒する教育委員会もあり、思うように設置が進んでいなかった。導入校の多くが特色ある学校づくりや生徒指導上の課題解決などで効果があると報告しており、前向きに取り組む必要があろう。
学校は地域の中核的施設だ。地域と学校がパートナーとして相互連携することは本来あるべき姿であり、地域社会が教育の場としての機能を発揮できなければ、子どもたちの健全な成長は見込めない。希薄化した当事者意識を地域に植え付ける契機としても期待したい。
専門スタッフや地域が参画する広範な「チーム学校」が、子どもの豊かな学びと成長につながるかは、チームワーク次第。学校全体で意識改革を行い、立場の異なる人材をチームの一員として迎え入れ、同じ目標に向かって情報を共有し連携を深められるかにかかっている。校長のマネジメント力強化が課題となる。
文科省は今国会で関連法改正案の提出を目指す。専門スタッフの法令、財政上の位置付けや人材確保の問題など、不明確な部分も多い。精力的に議論を進めてほしい。
答申は学校文化を変える教育改革になり得る。それだけに、外部人材の活用を財務省が教員削減に絡めようとしているのは残念だ。学校力強化という答申の理念を忘れ、財政面だけで人員の数合わせをすることは許されない。
http://www.kahoku.co.jp/editorial/20160109_01.html
160111 北海道新聞:教員定数削減 現場の実情から議論を
2016年度の公立小中学校の教職員定数が決まった。
学級数に基づく基礎定数は4千人減の約62万7千人、いじめなど学校現場の課題に応じて配置する加配定数は、525人増の6万4733人となった。
予算編成で少子化を理由に大幅削減を主張した財務省と、これに「機械的な削減は暴論」と反発した文部科学省の綱引きの結果だ。
肝心の子どもたちにとって何が適切なのかという視点で折衝が行われたか、疑問が残る。
確かに子どもの数は減っているが、現在は小学1、2年だけの35人学級を拡大するなど、少人数教育の充実を求める声は根強い。教員の多忙さも解消されていない。
大切なのは数字やデータではなく、未来を担う子どもたちを育てる視点である。それには現場の声をくみ取る仕組みが欠かせない。
今の学校は、いじめや不登校、少人数教育や習熟度別学習、英語教育の拡充などに加え、障害児や外国人の子どもへの対応など、仕事が多岐にわたっている。
文科省はこうした課題に対応するため、1969年に制度化された加配定数を活用し、数を増やし続けてきた。加配教員は今や教育現場では欠かせない存在だ。
こうした実情を踏まえれば、教職員定数を定める法律を改正し、非常勤の多い加配教員を基礎定数化して正規採用を増やしていくのが筋だろう。
財務省は折衝で、教育の費用対効果や科学的根拠も求めた。
しかし、費用対効果の観点で、子ども数の減少に合わせて教員数も自動的に減らす―という一律削減論を教育に当てはめるのは無理がある。教員定数のあり方を根底から議論することが不可欠だ。
経済協力開発機構の調査では、日本の公的教育支出の割合は先進国の中で最低であり、教員の勤務時間は最長だ。
身分の不安定な臨時的任用・期限付き採用教員の正職員化と合わせて、先生たちの処遇改善も進める必要がある。
文科省は、スクールカウンセラーなど福祉や心理の専門家と教員がいじめや不登校などの問題に連携して対応したり、部活動支援員が部活の顧問や引率を行う「チーム学校」を推進している。
16年度予算案ではスクールカウンセラーとスクールソーシャルワーカーの増員が認められたが、現場の先生たちが少しでも子どもたちと向き合えるようにするには、さらなる手当てが必要だろう。
http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/opinion/editorial/2-0039328.html
160114 東奥日報:学校・教委一丸で解消を/県内教職員の多忙化
教職員の多忙化解消について議論を重ねてきた県教委の検討委員会が先ごろ、県教育長に報告書を提出した。部活動の制限や会議の効率化など学校と教育委員会が取り組むべきことを明記している。
いじめ・不登校の問題など学校現場を取り巻く環境は複雑化し、学校に求められる役割は広がっている。その中で教職員の負担が増し、長年にわたって多忙化が言われ続けてきた。
教職員が多忙のために疲弊していては、影響を受けるのは結局、子どもたちだ。教職員が生き生きと子どもたちに向き合える環境を整えることが急務といえる。報告書を基に、学校と教委は力を合わせ、具体的な取り組みを推進してほしい。
検討委は、県内の小、中、高校、特別支援学校の校長や市町教委、教職員組合、PTAなどの委員で構成。昨年6回にわたり、多忙化解消の方策を話し合った。
報告書では、学校が取り組むこととして(1)ICT(情報通信技術)活用などで教職員の勤務状況の把握を徹底(2)部活動で参加する試合やコンクールの数を調整(3)会議や打ち合わせを精査し、回数を削減-などを盛り込んだ。
教委の取り組むべきことは(1)教職員の勤務状況を把握し、過重労働による健康障害防止に努める(2)地域スポーツクラブやスポーツ少年団への移行など小学校の運動部の在り方を検討(3)指導要録・通知票の電子データ化の推進-などを挙げた。県教委と市町村教委が連携して意識啓発し、学校の取り組み状況の調査を継続的に行うことも求めた。
教職員の時間外業務の主な要因の一つが、部活動の指導だ。子どもの成長に有意義だが、教職員の負担増につながらないように活動時間や日数調整が必要だろう。また、事務作業の負担を訴える声も聞かれ、教委による調査の精選などが求められる。
多忙化解消を目指すうえで学校においてまず重要なのは校長のリーダーシップだ。教職員間の業務の平準化などに留意してほしい。教委は人的配置や予算確保など学校支援への強い姿勢を持たなければならない。教職員自身の意識改革も必要かもしれない。
報告書は冒頭で、多忙化は「古くて新しい問題」と指摘している。関係者が一丸となって取り組まなければ、多忙化はいつまでも古くて新しい問題のままだ。
http://www.toonippo.co.jp/shasetsu/20160114009307.asp
160531 北海道新聞:部活動顧問 負担軽減に知恵を絞れ
中学校で部活動の顧問を務める教員の負担が問題になっている。
放課後の長時間活動や休日返上の指導などに追われる教員が少なくない。一方で、教員数の減少などから、顧問のなり手が不足し、望んだ部活動ができない学校もあるという。
このため、道内では部活動の指導の外部委託に取り組む自治体が出てきた。文部科学省も、教員以外の指導者が休日に校外への引率もできる制度の導入を検討中だ。積極的に取り入れたい。
大切なのは、教員の負担軽減を図りつつ、生徒も部活動を楽しめるようにすることだ。国や自治体は両立に知恵を絞ってほしい。
部活動は生徒の自主的、自発的な活動で、教育課程外に位置づけられている。
だが、現実は多くの教諭が顧問を務めている。
経済協力開発機構(OECD)の調査では、日本の中学教員が部活動の指導に費やす時間は週約7・7時間と、調査に参加した34カ国の平均の約3倍だ。
こうした現状を改善しようと、本州の公立中教員ら6人が「部活顧問をするかどうかの選択権を」と呼び掛け、約2万3500人の署名を3月に文科省に提出した。
この教員グループは部活動が責任感や連帯感を養うなど、その意義は認める一方、指導に追われ教材研究や生徒と向き合う余裕がない教員が少なくないとする。
普段の学習準備や生徒指導がおろそかになるのでは本末転倒だろう。国や自治体は現状を調べ、早急に改善を図るべきだ。
中央教育審議会は、部活動を指導する外部顧問「部活動指導員(仮称)」を制度化し、学校職員として位置づける答申を出した。
道内でも本年度、函館市が外部の人材に謝礼を支払い、指導してもらう制度を導入した。専門外の指導をしなくてはならない教員の負担を軽減する目的だ。
札幌市も昨年度から、一部中学校に特別外部指導者を導入し、従来の外部指導者には許可されなかった、休日の練習試合の引率などを可能にした。
こうした制度は、充実した部活動の場を提供するのにも有効だ。国や道による思い切った補助金の整備が求められる。
忘れてならないのは、外部指導者の質の問題だ。部活動はあくまでも教育の一環である。
極端な勝利至上主義で体罰の発生などにつながらぬよう、学校は十分注意を払わねばならない。
http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/opinion/editorial/2-0061432.html
160610 紀伊民報:(水鉄砲)「クラブ活動と教員」
中学校や高校の部活動に対する教員の負担をどう軽減するか。それがいま深刻な課題になっている。
▼ひと昔前は「先生は夏休みや冬休みがあっていい」などと言う人もいたが、いまは違う。学校を取り巻く環境の変化からほとんどの人が「先生は大変だ」と口をそろえる。
▼経済協力開発機構(OECD)が中学教員を対象にした2012~13年の国際調査では、日本の教員の仕事時間は参加国で最長。中でも部活など課外活動の指導は週7・7時間。参加国平均の2・1時間に比べて突出していた。
▼こうした現状を改善するため、文部科学省がようやく部活に休養日を設ける検討を始めた。休養日の設定や指導員として外部人材を活用する在り方などをまとめたガイドラインを早ければ来年度にも作成するという。
▼だが、ことは簡単ではない。練習試合や大会は土曜、日曜の開催が中心。平日開催では教科の学習に支障が出る。休日出勤が前提となっている現状を改善するだけでも容易ではない。
▼さらに、この地域特有の問題もある。公共交通機関の整備が不十分な紀南の学校では、大会や練習試合に参加するため、教員が仕方なく生徒を自家用車などで送迎している現実がある。これまでは幸い大きな事故は出ていないが、他県では過去に死者が出る事故も起きている。
▼こうした問題にも切り込み、教員の負担を軽減してほしい。教育の現場が「ブラック」であってよいわけがない。(河)
(2016年6月10日更新)
http://www.agara.co.jp/column/mizu/?i=315944
160801 西日本新聞:部活動の適正化 教員の負担軽減は急務だ
学校教員の長時間勤務を軽減するため、文部科学省が休養日を設けるなど、部活動の適正化対策を打ち出した。
教育課程ではない部活動に過剰に時間や労力を奪われ、教員が疲弊してしまっては本末転倒だ。見直しは急務である。
対策は以下のような内容だ。
教員や生徒、保護者などを対象に部活動の実態を全国調査する。併せて、スポーツ医学の視点から生徒の発達や生活に適切な練習時間や休養の在り方を研究する。その成果を踏まえ、休養日の設定を含むガイドラインを策定する。
方向性に異論はない。生徒の視点に立った検証も評価できる。部活動の行き過ぎは、教員だけでなく、生徒にも負担となる。
経済協力開発機構(OECD)の国際調査(2014年度発表)によると、日本の中学教員の仕事時間は34カ国・地域の中で突出して長い。特に課外指導は週7・7時間で全体平均2・1時間の3倍以上に及ぶ。運動部の顧問になると、大会の運営や引率で土日がつぶれることも珍しくない。
文科省は来年度から休日に部活動を指導した中学教員の手当を増額するという。だが、多くの教員が求めるのは休日の確保だろう。
文科省は1997年にも、中学の運動部は週2日以上、高校は週1日以上の休養日設定を促している。これが、守られていない。
まず、全ての学校が教員の負担軽減を喫緊の課題として受け止めることが必要だ。そうでなければ、新たなガイドラインができても実効性は期待できない。
部活動には、生徒の責任感や連帯感を育む効果がある。だからこそ、教員は情熱を注ぐ。保護者も学校に充実を期待しがちだ。
部活動の原則は生徒の自主的・自発的な参加だ。ところが、参加を強く促す学校は少なくない。内申書への影響を懸念して参加する生徒もいるという。
学校の部活動はどうあるべきか。地域で担えることはないのか。教員の負担軽減とともに、こうした議論も深めていきたい。
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/syasetu/article/262943
161007 琉球新報:教員超勤放置 労基法順守し健康を守れ
このままでは教職員の健康を守ることができない。法を順守し、勤務状況の把握を急ぐべきだ。
県内全市町村の教育委員会が一部の例を除き、公立小中学校教員の退勤時間を把握できていないことが琉球新報社の調べで分かった。
労働基準法に準ずれば、市町村教委は教員の勤務状況を把握する義務を負う。それが履行されていないのだ。労基法に抵触する恐れがあり、民間企業では許されない。このような異常事態を直ちに解消すべきだ。
市町村教委は校長や教頭ら管理職に勤務状況の把握を一任しているというが、それが現実的でないのは明らかだ。管理職が退勤すれば、教員の勤務状況を把握する人はいない。これでは教員の厳しい労働環境が見過ごされる。
市町村教委が教員の退勤時間を把握していないのは、時間外勤務手当を計算して、教員に支払う必要がないからだ。1971年に作られた規定に従い、月8時間の時間外勤務手当に相当する額(基本給の4%)を月給に上積みすることになっている。
この規定は、今日の教育現場の実態から大きく懸け離れている。沖縄県教職員組合が2013年に実施した幼稚園と小中学校教職員の勤務実態調査によると、時間外勤務は月平均92時間に達している。「過労死ライン」とされている月80時間を超えているのだ。
教員は過重な事務処理や部活動、学力向上対策に追われている。県教育庁によると、15年度に病休で休職した県内公立小中高校、特別支援学校の教員は過去最多の421人に上った。41・8%(176人)は精神疾患による休職である。
教員総数に占める病休者数の割合は全国最悪レベルだ。教員の勤務状況を把握しなければ、病休の背景にある厳しい職場環境の放置につながりかねない。
過労死対策を国の責務とする「過労死等防止対策推進法」が14年に成立した。労働者の命と健康を守る対策が急がれている。この動きから職員室を取り残してはならない。
まずは市町村教委が勤務状況把握の仕組みを構築すべきだ。読谷中学校は今年5月にタイムカード制を導入し、沖縄市も10月中に市内24小中学校で教員が勤務時間を自己申告する仕組みを取り入れる。ほかの市町村も追随してほしい。
県教委も主導的役割を果たすべきだ。学校現場任せではいけない。
http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-371282.html
161108 紀伊民報:部活動の休養日 掛け声だけでなく定着を
中学校運動部の活動について、県教委は週1日(原則として土曜か日曜)は休養日にし、練習時間も平日は2時間、休日は4時間までにすることを各学校に徹底させることを決めた。
この問題では、県教委の有識者会議(委員長・本山貢和歌山大学教授)が1月、県内の国公立中学校1、2年生と運動部の顧問全員を対象に調査した。部員の44・5%が1週間の練習日数が7日と答えた。「疲れがたまる」「休日が少な過ぎる」という質問には、ともに3割が「はい」と答え、2割の生徒が「遊びや勉強の時間がない」と答えた。顧問の40・2%も「練習日数は7日」と回答しており、十分に休養が取れない現状が裏付けられた。
この調査を基に、有識者会議は「生徒の生活バランスが確保できず、教員の多忙化にもつながる」として休養日を設け、練習時間を短縮するよう提言した。
課外活動で得られるものは大きい。仲間と汗を流し、目標に向かって努力すること、集団の中での振る舞いや周囲への気配り。それらが人格を形成し、生涯の財産になることも少なくない。
しかしそれは、教育として取り組んでこそであり、目先の勝敗を優先した指導では逆効果になりかねない。長時間の活動では疲れがたまり、心身の発達に支障が出ることもある。自宅学習の時間が取れず、授業についていけなくなる場合もある。
この問題では、文部科学省が20年近く前に中学運動部は週2日以上、高校は週1日以上の休養日を設ける指針を策定した。県教委も2014年春に「運動部活動指導の手引」を策定、学校に「適切な休養日と練習時間の設定を心掛けた指導に留意」と求めている。
しかし、それが現場に浸透していない。そのため、今回の提言は各校が必ず休養日を設定し、確保するよう県教委が指導性を発揮するように求めている。
提言を受けて宮下和己教育長は「掛け声だけで終わらせず、定着させたい。すべての学校、教員、保護者に浸透させるよう、市町村教委にも協力を求めていく」と回答。早速、手引の改定に取り組むなど施策に反映するという。
しかし、心配もある。学校の管理下ではない「自主練習」を名目にした活動が増えるのではないかという問題である。特定の競技を中心に、勝利至上主義がはびこっている現状にメスを入れないままでは、学校が制御できない形で事故が起きる危険性もある。
有識者会議委員長の本山教授は「練習時間が長いから競技力が高いとは必ずしもいえない」として、練習内容の効率化が重要と指摘する。まずは、学校現場が「時間より効率」という意識を持つことが必要ということだろう。
有識者会議の調査では、90%の運動部員が部活は楽しいと答えている。その気持ちに応えるためにも、生活バランスを整える知恵を絞りたい。県教委にはその指導力が求められる。 (K)
http://www.agara.co.jp/column/ron/?i=323923&p=more
161218 北國新聞:全国体力テスト 「文武両道」を育む環境さらに
スポーツ庁が今年実施した児童生徒の全国体力テストで、石川県の都道府県別順位は、調査対象の中2、小5で男女とも1ケタ台と高水準を維持した。9月に発表された全国学力テストの結果では、小6の平均正答率が4科目中3科目で全国1位となって残る1科目も2位、中3については全4科目が2~4位以内という好成績だった。学力と体力の2分野での高い評価は、地域の住みよさを、側面から裏付ける指標でもあろう。県内に「文武両道」とも言うべきバランスの取れた育成環境をさらに整えていきたい。
遊びの多様化などによる子どものスポーツ離れは、かねてから指摘されており、する子としない子の二極化が進んでいるとも言われる。国では年度内にもまとめる第2期スポーツ基本計画の素案で、子どもの体力をピーク時の1985年頃の水準に引き上げるため、小学校の体育教員の増員などを必要な施策として盛り込んだ。
全国体力テストは、そうした子どもの体力の現状をみる指標である。2008年度から小5と中2を対象に実施され、8種目を評価し数値化する。今回、全国的には女子の合計点の平均が小中とも過去最高となり、男子も前年を上回るなど上昇傾向が出てきている。
県内でも女子は小5、中2とも過去最高、男子はいずれも過去2番目に点数が高かった。学校ごとに苦手分野の克服に向けた独自の体力アッププランを立て、実践するといった積極的な取り組みの成果が出たとも言われる。
東京五輪を控え、県内でもアスリートの育成や強化に力が入っているが、その基盤として子どもの健全な成長につながる基礎体力の底上げが必要であり、学力テストの場合と同様、健康3原則と言われる「運動」「食事」「睡眠」の質を高めることが大切だろう。
体力テストで握力やボール投げの成績が低かったのは、生活の中で手を使う場面が少なくなったことも一因と言われる。そうした意味では、学校現場の運動指導だけでなく、軽運動も取り入れた規則正しい生活習慣の指導や、食育の推進、地域活動への参加も体力向上の要素として目配りしたい。
161221 読売:日大東北相撲部 暴力は指導でなく犯罪行為だ
「指導」に名を借りた暴力行為が、いまだにまかり通っていた。暗澹あんたんたる思いにさせられる。
福島県郡山市の日本大学東北高校の相撲部で、顧問の男性教諭とコーチが、部員に暴行を繰り返していたことが明らかになった。
今年5月頃、教諭はデッキブラシで1年生の部員をたたいて、けがをさせた。部員は1週間近く練習を休み、7月末に転校した。
教諭が部員の頭を硬質ゴム製のハンマーでたたいていたことも、今月になって判明した。平手打ちや足蹴りも加えていた。
どのような理由があるにせよ、暴力は、指導でなく、犯罪行為である。生徒の人格を踏みにじるものだ。部活動の指導者は、肝に銘じなければならない。
日大東北高校相撲部は、全国高校総体に14回出場するなど、強豪校として知られる。
教諭は、コーチを経て、今年度から顧問になった。日大相撲部時代に、全日本選手権の個人戦で準優勝している。自らの実績をかさに着て、部員に威圧的な態度で接し、服従させたのではないか。
既に日大を退職したコーチも、ノコギリを用いて部員をしごいたという。常軌を逸した行為が常態化していたと言うほかない。
大相撲でも、時津風部屋の若手力士の暴行死事件など、暴力的体質が幾度となく問題化した。
暴力を振るわれた選手は、指導する立場になると、自らが暴力を振るうケースが少なくない。負の連鎖を断ち切ることが肝要だ。
看過できないのは、今回の学校側の無責任な対応である。
7月に教諭の暴力行為を把握していながら、対外試合の引率を自粛させただけで、授業や相撲部の指導は、そのまま続けさせた。県への報告も怠った。
新たに暴力が判明した今月16日になって、ようやく部活動の指導をやめさせ、自宅謹慎とした。校長は「監督不行き届きだった」と謝罪した。危機管理の意識が、あまりにも欠如している。
大阪市立桜宮高校のバスケットボール部の生徒が2012年、顧問教諭から体罰を受けて自殺した事件では、暴行と傷害罪に問われた教諭の有罪が確定した。
事件を受けて、文部科学省は体罰禁止の指導を強めた。今回の問題は、それが教育現場に徹底されていないことを示している。
試合に勝つためなら、「愛のムチ」は許される。そうした勝利至上主義の誤った認識を部活動の指導者から一掃する必要がある。
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/20161220-OYT1T50110.html?from=ytop_ylist
161221 京都新聞:頑張り過ぎ部活 休養の大切さ気付いて
ちょっと頑張り過ぎでは、と心配になる。
中学生たちの運動部活動である。学校が決めている部活の休養日についてスポーツ庁が調査した結果、週1回というのが最も多くて54・2%、全く設けていないが22・4%もあって、これには驚いた。
1週間の活動時間は平均で15時間を超え、その4割の時間が土、日曜日という。
成長期の身体に無理はないだろうか。文部科学省は「行き過ぎた活動は弊害を生む」と指摘しているが、学校には届いてないかのようだ。20年前の調査だが、身体の使い過ぎによるスポーツ障害で、1週間以上練習を休んだ中学生が12・6%もいる。
もっと休養の意義を考えてほしい。けがの予防だけでなく、心身のリフレッシュは生活の上で大切なことだ。
そもそも部活動の目的は、伸び盛りの頃の体力づくりにとどまらず、仲間との交流を通じて相互理解や自主性、克己心を養うことで人格を形成し、豊かな人間性を育むことにあるはずだ。
一方で見過ごせないのは、顧問の教員の負担。9割近い学校で教員全員が顧問になっているという。放課後や土日に指導や試合の引率に当たり、授業の準備時間を圧迫しているとも聞く。
いま働き方改革の一環で長時間労働が議論されている。教員についても以前から問題になり、文科省は1997年度の指針で中学の部活を週休2日以上としていたが、もう忘れ去られている。
顧問の手当はわずか。教員の義務のような顧問のあり方を、見直す時ではないか。また、運動部活の経験のない教員が顧問になることも少なくない。経験のある教員が自分の体験を絶対視するのも困る。科学的な観点を取り入れた新しい指導法を学ぶ必要があろう。部員の生徒と一緒に練習法を考える時間もほしい。
指導者を外部に求めるケースも増えている。栄養や心理、健康など多面的なサポートがもっとあっていい。学校を開放して地域スポーツとつながりを持つ、そういう発想はどうだろう。
顧問の体罰や先輩部員の後輩への暴力は、部活が閉鎖的な世界に陥ることから起きる。勝利至上主義が根強く残るのは残念だ。
スポーツが文化であるのは、心身を豊かにするからだろう。この際、部活のあり方を根本から考えてみてはどうか。そのためには、やはり休養日が要る。
http://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20161221_2.html
161222 河北新報:福島・部活動で暴力/学校側の感度が鈍すぎる
郡山市にある日大東北高の相撲部で部員に対する暴力が発覚した。ハンマーやのこぎりを使っていたというから、かなりひどいやり方だ。
放課後の部活動とはいえ、体罰や暴力行為が許されるわけはない。いまだ根強く残る体育会系の暴力体質なのかもしれないが、学校側の対応の鈍さには驚かされる。
福島県への報告を怠っていたばかりか、実態を正確に把握していないことも明るみに出た。学校側が指導力を発揮しない限り暴力体質は容易に改まらないだろう。
部活動では、生徒間のいじめが起きることも多い。教室内と同じように部活動にも目を光らせないと、生徒の安全は到底守れない。
学校側の説明によると、部員に暴力を加えていたのは、顧問を務める20代の男性教員と非正規職員の50代の男性コーチだという。
教員はことし5月、デッキブラシで1年生の男子部員を殴ってけがをさせた。2人はさらに、ゴム製のハンマーで頭をたたいたりもしていた。
部員の体の下にのこぎりを置いて、腕立て伏せをさせたこともあるという。ちょっとした弾みで大けがをしかねない。もはや指導とは言えず、恐怖を与えることだけが目的のいじめではないか。
暴力行為はことし7月、部員の保護者が学校に連絡して発覚したが、対応が全く鈍かった。教員には何の処分もせず、反省文を出させて顧問としての活動を停止しただけ。コーチは9月に退職した。
18日に記者会見を行った際には、暴力の時期やけがの有無についての説明があいまいだったという。さらに、事実を把握した時に県へ報告しなければならなかったのに、校長が「必要ない」と判断して行わなかった。隠蔽(いんぺい)と疑われかねない行為だ。
部活動での暴力はどこの学校にとってもひとごとではない。「強くするため」という勝手な理屈で、暴力的な行為をある程度容認する雰囲気はいまだに残っているだろう。
学校側が見て見ぬふりをしていては、いつまでもやまない。指導者による暴力的ないじめだとみなして、厳しく対処すべきだ。顧問やコーチに対してはくどいほど、暴力は絶対に駄目だと指導しなければならない。
教室だけでなく部活動でも生徒によるいじめが起きて、被害者の心を深く傷つけるケースがある。
一昨年1月、天童一中の1年生だった女子生徒が自殺して大きな問題になったが、クラスとソフトボール部の双方で陰湿ないじめを受けていたことが、第三者調査委員会の調べで分かっている。
教室に比べ部活動の様子は外部の目が届きにくく、いじめの温床になりかねない。指導者による理不尽な暴力だけでなく、生徒によるいじめを防ぐためにも部活動を放置してはならない。
http://www.kahoku.co.jp/editorial/20161222_01.html
161226 千葉日報:ガイドライン、早急に策定を 部活休養「設定なし」16%
スポーツ庁が本年度初めて実施した中学校の「部活動休養日」の全国調査によると、本県公立校で休養日を「決まりとして設けていない」学校は16・1%(全国公立平均は22・0%)に上ることが明らかになった。「運動部活動は、子どもたちの心身の成長にさまざまな役割を果たしている」(県教委)ことはもちろんだが、行き過ぎた練習は肩や肘の故障など弊害をもたらしかねない。顧問となる教員の負担軽減も課題となっており、部活改革を求める声が高まっている。同庁と文部科学省は、休養日の設定などを盛り込んだ部活動の在り方のガイドライン策定を検討しているが、早急に取りまとめ周知すべきだ。
調査結果によると、本県で部活休養日を決まりとして「週1日」設けている学校は76・2%(全国公立平均55・6%)で、「週2日」は5・3%(同14・0%)、「週3日以上」は皆無(同2・0%)だった。また土日の休養日設定が無い学校は51・4%(同42・4%)と半数を超えた。県内の1週間の部活動時間は男子が18時間18分、女子が19時間3分で、いずれも全国に比べ約2割長かった。
土日を問わずほぼ連日、早朝・放課後に練習を重ね、下校後は疲労が蓄積し家庭で学習する気力を失ってしまう子もいるだろう。文武両道の観点から、少なくても土日いずれかに休養日を設定し、さらに平日もノー部活デーを積極的に設け、生徒をリフレッシュさせるべきだ。
各教委や学校長は、ほぼ“強制的”に顧問を担当させられる教員の負担軽減策も模索してほしい。日々の学習指導に加え、部活では夕方や土日・祝日の時間を割かれ、教員は心身ともに疲弊している。文科省は公立中学校教員に支給する「部活動手当」を来年度から2割増額する方針を固めた。待遇改善などで、過重労働を強いられる教員の負担感を緩和していくべきだ。
一方、顧問となる教員の「指導力不足」を指摘する声も少なくない。鈴木大地同庁長官は「(競技の)専門知識や経験、教える意欲もない教員が部活動を担当するのは生徒が気の毒」として、民間の活用に前向き。運動部指導の質向上と外部人材の活用を狙いに、自民党スポーツ立国調査会が検討を開始した「スポーツ指導者の国家資格制度創設」。この実現にも期待したい。
http://www.chibanippo.co.jp/serial/374090
161227 紀伊民報:子どもの体力と学力 学校プラス家庭と地域で
小学5年男女と中学2年男女を対象にした文部科学省の「全国体力テスト」で、和歌山県の成績が向上している。体力点は毎年のように上がり、下位に低迷していた全国順位も上昇中だ。
2008年度に調査を開始した当初、中学校は男女とも全国平均より3点以上も低く、順位も最下位に近かった。とりわけ男子は3年前まで40位台だった。しかし、本年度は21位と向上。女子も14年度の39位から15年度には18位に上昇した。本年度は20位だが、点数は向上しており、全国平均との差も広げている。
小学生も、当初は男女ともに30位台だったが、本年度は男子が14位、女子は12位。女子の点数は全国平均を1点以上、上回った。
改善の理由について、県教委は「体力アッププラン」が一つの要因という。学校や市町村教委が毎年度、体力テストの結果を参考に課題を分析し、目標や具体的な取り組みを掲げ、実行する取り組みである。
運動の習慣がない子や苦手な子にも親しんでもらう取り組みも改善につながった可能性がある。3年前にダンスを制作し、学校の授業に取り入れたこと、指定種目に挑戦し、楽しみながらインターネット上で記録を競う「チャレンジランキング」が定着したこと、さらには昨秋の「わかやま国体」の影響も考えられるそうだ。
子どもの成長には、心身の健全な発達が欠かせない。健康な体づくりは、ストレス解消にも役立つ。スポーツに親しみ、楽しむことを覚えれば、人生が豊かになる。今回の成績向上に自信を持ち、多くの子どもたちが運動好きになるような指導に取り組んでほしい。
一方で、学力については体力ほどには改善の兆しが見えない。小学6年と中学3年を対象にした本年度の「全国学力テスト」では、小中計8教科中5教科が全国40位台、うち2教科は最下位だった。
学校での教育、家庭での指導など、要因は複雑に絡み合っているが、明確なことが一つある。生活習慣上の問題である。文科省の調査で、県内の子どもがゲームやネット遊びに費やす時間が全国平均を大きく上回ることが判明している。これを少しでも運動や学習の時間に回したい。その意味では、家庭に求められる役割がいま以上に重要になってくる。
体力と学力は、互いに関係があるといわれる。実際、毎年学力テストで全国のトップクラスに位置する福井県や秋田県は、体力テストでも上位に位置している。体力を育成する取り組みが成功すれば、学力向上にも生かせる可能性がある。その取り組みをどう進めるか。体力が改善傾向にあるのなら、その考え方を学習指導にも生かしたい。
県は来年度、家庭や地域が学校運営に参画できる「コミュニティスクール」制度を全小中学校に整備する。これをてこにすればどうか。学校任せではでなく、家庭や地域を巻き込んだ取り組みで子どもの心身を鍛えたい。(K)
http://www.agara.co.jp/column/ron/?i=326743&p=more